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旅のスタートはデンマークのコペンハーゲン。夫は一晩だけ、私は三日間滞在しました。お天気は、晴れたり曇ったり雨が降ったり。日差しが強く能天気なカリフォルニアとは異なり、しっとりと中間色の似合う街です。石造りのがっしりした建物が通りに沿って並び、ヨーロッパに来たんだなぁ、としみじみ思います。
<←車道の両側に自転車専用道路が設けられており、信号も自転車専用のものが設置されていました。>
<↓人魚姫の像。クリックすると拡大します。左端の石の上に座っているのが人魚姫。>
コペンハーゲンに来たのですから、たとえ世界三大がっかりの一つと言われようとも、人魚姫の像を見ずには帰れません。気乗りのしない夫をだましだまし、
主要な観光ポイントをチェックしながら、街外れにあるこの像まで歩きました。
この後訪れたスウェーデンにも共通することですが、今回の旅行で印象的だったのは照明の美しさ。寒く、日照時間の短い冬を、少しでも明るく暖かみのあるものにするためなのでしょう。ということで、コペンハーゲンで出会った照明をご紹介。
<←宿泊したSavoy Hotelの階段。>
Savoy Hotelは1906年にオフィス用に建設されたという5階建ての建物を改装して使用しています。5階から下がっていたこの階段ホールの照明、さすがに建築当時からのものではないかな。
デンマーク工芸博物館内の図書室。天井からは、通路上と机の上とに高さの違うランプがまっすぐ二列並び、机の上には、手元用のスタンドも並んでいます。
今回の旅行で一番気に入った、デンマークデザインセンターの照明。円盤が規則正しく宙に浮いたような、ごくシンプルなデザインが美しく、円盤の間からは柔らかい光が広がっていて、いくら眺めていても飽きません。実際この日は雨だったので、カフェにどっしり腰をおろして、心ゆくまで眺めていました。調べたところ、このEnigma 825という照明、日本の方がデザインしたものでした。なんと!
その他、デザインセンターに展示されていた照明の一部。
夫が参加した学会は、スウェーデンのヨーテボリで開催されました。スウェーデン第2の都市、だそうですが、今回訪れるまで全く知らない街でした。スウェーデンの南部、北海側に位置する港街で、ボルボの本社があります。コペンハーゲンからは電車で 3時間ほどです。
写真は、現在市立博物館として使用されている東インド会社の建物。18世紀中頃に建設されたものだそう。てっきりオランダかどこかの東インド会社がヨーテボリに支社でも持っていたのかと思っていたら、どうやらスウェーデンにも独自の東インド会社が存在していた模様です。その名残りか、このあと訪れたルスカ美術工芸博物館には、過去から現在に至るまでにスウェーデンでデザインされた家具、食器、電気製品などとともに、充実した中国陶磁器のコレクションが展示されていました。
ヨーテボリの後に訪れたのはルンドです。ルンドは北欧最大の大学、ルンド大学を中心とする学生街です。ルンド大学は、1438年に設立された神学校がその前身で、現在4万人以上の学生が学ぶ北欧最大の大学だそう。その中に夫の友人が研究室を構えているので、1泊だけ立ち寄りました。半径500mほどの街中に、駅やら商店街やらキャンパスやらがきっちりと収まっています。この中に4万人の学生が暮らしているのですから、普段は学生達で溢れかえっているのでしょうが、私たちが訪れたのは新学期がようやく始まるか、というような時期だったため、それほど混み合った印象はありませんでした。
波模様のような石畳がとても美しい。
この街で面白かったのは、朝から美容院が大繁盛だったこと。夫が研究室に出掛けていったので、私は一人で街をぶらぶらしていたのですが、まず美容院の数が多い。若い人が多く住んでいるせいなのか、通りに一軒、という感じです。ガラス張りにしているお店がほとんどで、中の様子がよく見えます。朝の9時半だっていうのに、どの店にもお客さんが一人二人入っているんですよ。カットの途中だったり、パーマをかけてもらっていたり。お客さんは若い人ばかりでなく、中高年の方も鏡の前に座っています。とある一軒などは、中に二人のお客さんがいて、さらに二人の年配の女性が次々と吸い込まれて行きました。お客さんがいるのに中をじろじろと覗くもの失礼かと思い、十分に観察できませんでしたが、ルンドの女性はおしゃれさん、なんでしょうか。
学生と美容院の街、ルンド、でした。
旅の最終目的地はストックホルム。夫は学会とセミナーが終わって肩の荷が下り、ようやくバケーション気分が盛り上がってきたようですが、私はもう白いご飯が恋しいなぁ。
ストックホルムで最初に目指したのは市庁舎。塔のてっぺんに登ると、360度街を見渡すことが出来ます。しかし、この日は小雨の降る空模様。風は強いし、とにかく寒い!天気が良ければ、どんなに気持ちがよいことだろうかと凍えながら、むやみにシャッターを押すのが精一杯でした。
途中、デパートや市場を覗き見しながら、次に向かったのは市立図書館です。円柱形の建物の中側が、壁に沿ってぐるっと一周書架になっていて、圧倒される美しさ。天井はドーム型で、壁の凹凸が照明の光を柔らかく返し、その凹凸の陰は空に浮かぶ雲のようです。私の持っていた「図書館」という場所のイメージを大きく覆す開放的な空間でした。
夕方からは天気が持ち直し、美しい夕焼けが期待出来そうだったので、日の入りに時間に合わせて高台を目指しました。日が落ちてからも、うっすらとオレンジ色に染まる空の優しく美しいこと。
翌日はスカンセン(日本語はこちら)という野外博物館を訪れました。農家や豪族の邸宅、教会など、スウェーデン各地から伝統的な建物約150棟を一カ所に集め、当時の衣装を身にまとった人々が生活の様子を再現しながら見学者に説明してくれます。雑貨や生活道具を扱う店、パン屋、ガラス工房や木工房でも実際に人が働いていて、作業の様子を見ることが出来るのです。小さな動物園も併設されていて、子供から大人まで一日中楽しめる施設でした。ちょうど「亜麻特集」みたいな時期で、亜麻にまつわる一連の作業が見学出来ました。亜麻は寒冷地でもよく育つので、ストックホルム以北の地域では栽培が非常に盛んだったそうです。亜麻を栽培している畑で亜麻を刈り取るところから始まり、刈り取った亜麻を束にして天日に干し、乾いた亜麻を叩いて茎の中から繊維だけを取り出し、その繊維から縄をなったり、取り出した繊維をさらに何度も何度も梳いて、まるで金髪の房のような均一の細い繊維にしてからその繊維で糸を紡ぎ、その糸を足踏みの機織りで織って生地にする。それらの作業を、昔ながらの道具を使って実演しています。実は同じような野外博物館の、もっと小規模な施設をルンドでも訪れたのですが、ルンドの施設では亜麻のことをこんなに詳しく展示していたという記憶がありません。単に気付かなかっただけ、という可能性も大ですが、ストックホルムより南に位置するルンドでは、亜麻以外の作物も(を?)栽培していたということなのかも知れません。
いずれにしても、現在は無くなってしまった暮らしですが、風土に即した暮らしを垣間みることが出来たのは、非常に興味深い経験でした。
気がつけば、旅行から戻ってからほぼひと月が経っています。なにやら忙しく、印象を綴るのみに留めた旅行の記事にも時間がかかってしまいました。
毎日何をしていたかと思い返してみると。
まずは旅行中、お友達二人に預かってもらっていた我が家の鉢植え全10鉢を迎えに。我々の旅行中パロアルトはかなりの暑さで、お二人をずいぶんはらはらさたようでした。お陰さまで、預けられ先のお宅でそれぞれかわいがってもらっていた鉢植え達は、みんな元気。お世話になってありがとうございました。鉢植え達には留守番のご褒美に、液肥をやりました。
それから自転車。この4週間で9日乗ったので、平均すると週2日、平日と週末に各1日といったところです。1回の走行距離も長くなって50km程度。4月以来の総走行距離は、1880kmを超えています。東京から鉄道をたどった距離でいうと、西は九州上陸後、九州新幹線の終点鹿児島駅までは約1350kmでした。北へは八戸以北はくねくね走る在来線をたどり、札幌 (1148km)、旭川 (1285km)を経て日本最北の鉄道駅、稚内までは1544km。いずれも通過しました。
それからボランティア。地元の高校は8月末から新学期が始まりました。今年度も日本語のクラスのお手伝いを続けています。日本語を学び始めて4/5年目(中学校からの通算年数)の生徒達のクラスに行き始めました。クラスの2/3は去年から顔なじみの生徒達、それ以外は6-7人なので、じきに名前が覚えられそうです。
それから週1回は英語のレッスンに通い、週1回はEnglish speaking partnerと会い、それらの合間をぬって、友達と集まったり、出掛けたり、ブッククラブ(今月の課題図書は、NHKの大河ドラマに影響され、宮尾登美子の「天璋院篤姫」でした。)があったり、盛り沢山な一ヶ月でした。
もう一点、何となく時間を潰してしまう要因として、TVあるいはDVDを付けっぱなしに出来るようになったことが挙げられるかと思います。渡米後長らく、英語のTV/DVDは、映像を頼りに、集中して聞くか字幕(英語)を追うかしないと話が分からず、ほどなく疲れて消すのが常でした。ところが、最近つけっぱなしにしている北京オリンピックの再放送などは、それぞれの競技についての専門家が、大衆にわかりやすく解説しているわけで、これは私が聞いてもわかりやすい。「ながら聞き」も可能で、出掛ける用事でもない限りなかなか消せません。映画やドラマのDVDにしても、以前は字幕を読むのが間に合わなくて、途中で止めたり戻ったりしていたのですが、このごろは聞いて理解出来る部分が増え、また話の筋がわかる限りは、たとえ言っていることがわからなくても気にしない術も身についてきた為に、連続視聴が可能です。
ただ、聞くのと同等に話せるわけではないのが辛いところ。この「ながら聞き」能力は、今後何かの役に立つんでしょうか???この先の経過に期待、です。
旅行後のビックイベントの一つは、バリフェアでのお買いです。バリフェアは200以上の店舗が並ぶ巨大ショッピングモール。我が家から30km近く離れており、完全に私の活動範囲外なのですが、諸般の事情により、この春日本でわざわざ買ったジーンズ(しかも唯一の!)が履けなくなるという事態が勃発し、新規購入を決意した矢先、最近バリフェアの近くに引っ越した友人と話していてそのモールの存在を知り、案内してもらうことにしたのです。
お昼前に友人を迎えに行き、一緒に腹ごしらえをして、何はさておきリーバイスへ。(実際にはその道すがら、あちこちよそ見。)形はストレートと決めていたので、選択肢は1つでしたが、どうやらその1つが履けそうです。丈は、日本だと履いた本人に合わせて小一時間ほどで直してくれますが、ここにはそんなサービスはありません。1つのサイズに対し、5cm違いの3種類の長さがあり、その中からコレ、と思うものを選ぶのです。当然私は一番短いもの。それでも気持ち長めでしたが。一番迷ったのは色。私はどうせ色落ちするので、色を落としていないものがいいかと思っていたのですが、同行の友人は、ジーンズをはいて自転車に乗ると、お尻だけ色落ちして「かっこ悪い」ので、最初から多少色を落としてあるものの方がお尻の色落ちが目立たなくてよい、とのご意見。確かに。渡米時に持ってきたジーンズは、お尻の部分だけどんどん白くなり、ついにはそこだけ穴が空いたのでした。さんざん試着して、最終的には友人のアドバイスに従い、色の落としてあるものを購入。$73.61なり。根拠もなく$50〜60かなと予想していたのですが、そんなに安いものでもありませんでした。
その後もふらふらとモールの中を歩き回り、ふと気付けば夕方です。とっても充実。とっても満足。とってもいい一日でした。