先月のある日、見覚えのある家の写真が印刷された絵はがきが届きました。今住んでいるアパート近くで売りに出された家の広告でした。
この辺りの家は、玄関先にちょっとした前庭をしつらえ裏庭を広く取り、そのちょっとした前庭にはきれいに刈り込まれた芝や季節ごとの花が植えられたりしているのが常なのですが、今回売りに出された家は、前庭を広くとっている割には草ぼうぼうで、古びた小屋といった風情の家屋が敷地の一番奥にこじんまりと建ってるという、ちょっと周囲とは趣きの異なる家でした。散水機に頼ってきれいな芝を維持しているこの地域で、その前庭の放ったらかしっぷりはむしろ潔いように思い、だらしないとも言えるその家は私のお気に入りだったのです。
それがある日、ぼうぼうだった草がこざっぱりと刈り取られ、「あれ、どうしたのかな?」と思っていたら家の前には近日売り出し予定の看板が立ち、「へぇ〜、売りに出すんだ。」と思っていたら絵はがきが届き、とある週末にオープンハウスが開かれたと思ったら、数日後には売り出しの看板に「SOLD」の看板が追加されていました。人の家のことながら、あっという間の出来事でちょっと驚いてしまいました。ちなみにこちらのお宅、敷地は700㎡弱(約210坪)、奥のこじんまりとした家は広さ約72㎡、ベッドルームが2つ、バスルームが1つ、暖炉付きのリビングダイニングとキッチンで、築90年だそうです。お値段はと言いますと$1,250,000。$1=¥110で計算すると、1億3750万円ですね。とーってもいいお値段ですねぇ。
広告には、手前の空いている敷地に好きな家が建てられます、という宣伝文句がついていました。Palo Altoあたりで流通している一軒家は、こちらのお宅程ではないにしても、築何十年といういわゆる中古住宅がほとんどのようなので、自分の好みの家が建てられる、というのはそれを望んでいる人にとっては滅多にないチャンス、密かに人気なのかもね、我が家では話していました。私は勝手に、あの家を買った人が、大きくて立派な家をどーんと建てたりせずに、あの放ったらかしの前庭の奥で、あの肩の力の抜けた小さな家にちょっと手を加えた程度で住み続けてくれないかなぁ、と願っているのですが。