2008年大統領選挙と科学者:内からの視線
NIH at the Crossroads: Myths, Realities and Strategies for the Future [Link to PDF]
Elias A. Zerhouni, M.D., Director NIH
ペンシルバニアの民主党予備選挙ではヒラリーが勝って、まだまだ混沌が続くアメリカ大統領選挙。医学・生物学系科学者がなぜ大統領選挙に大きな関心を寄せるのか。その理由は明快だ。
総額では潤沢にあるとされる研究費も、基礎研究になればなるほどNIH、すなわち連邦予算に依存する割合が高くなる構造になっている。
候補者も政党も最も基本的な属性として、保守かリベラルか、が基本対立軸になっていて、それによって、どちらのピラミッドに重心を置くかが決まってくる。ここで日本人に植え付けられた「保守」をイメージしてはいけない。
アメリカの「保守」は日本人がイメージする「保守」とは全然違うのであった。
「なるべく何もしないのが良い政府。産業界に干渉せず、税金はなるべく少なく。産業保護・育成なんてとんでもない。」というのがアメリカの保守の王道。
日本だと、なんとなく自民党=保守、というイメージで、自民党と言えば、国家介入による産業保護、という印象がありませんか。
アメリカの「保守本流」は小さな政府主義。すなわち科学の発展はNIHの予算を潤沢にすることによってではなく、民間会社がより自由に活動出来るようにして、その結果必要ならば民間が研究費を出すことによって達成される、というスタンスとなる。この数年、ブッシュ政権の元でNIHの予算増加率はインフレ率を下回っており(すなわち実質減額)、科学者は今後の展開に敏感になっている。
ところで、近年NIHグラントの採択率が下がり続けていることが良く話題になるが、今回調べてみたら、そう単純な話ではないことがわかったので次のエントリーで。