「国家の罠」佐藤優

こちらの書評の通り、刮目の書である。

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

本質的な情報を抽出する能力の必要性について、改めて考えさせられる。

「新聞は婆さん(田中眞紀子大臣)の危うさについてきちんと書いているんだけど、日本人の実質識字率は五パーセントだから、新聞は影響力を持たない。ワイドショーと週刊誌の中吊り広告で物事は動いていく。残念ながらそういったところだね。その状況で、さてこちらはお国のために何ができるかどうかということだが......」と(外務省)幹部は続けた。

検察は基本的に世論の目線で動く。小泉政権誕生後の世論はワイドショーと週刊誌で動くので、このレベルの「正義」を実現することが検察にとっては死活的に重要になる。

最近、検察が政治化していることは事実だ。しかし、国策捜査との絡みでは、その政治化が広範な国民に危機を及ぼすには至っていない。国策捜査のターゲットとなるのは、一般国民ではなく、第一義的に国家の意思形成に影響を与える政治家で、その絡みで派生的にそのような政治家と親しい関係をもつ官僚や経済人だ。一般国民は、むしろ検察に対して「もっとやれ」とエールを送っているのである。より正確に言うならば、一般国民からの応援を受けることができるように検察が情報操作工作を行っているのである。

この本を読む前と後では、鈴木宗男ー佐藤優事件に対する理解は全く異なるものとなる。しかし、著者は一流の情報屋である。そのことは本文の随所から理解できる。すなわち、本書に記載されている内容についても、公開して良い情報と、いけない情報の選別はきわめて合理的に行われているはずである。新しい理解も部分的な情報に基づいたものであることを意識しておかなければならない。

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April 17, 2005