橘玲著「永遠の旅行者」
”ツァラトゥーストラはかく語りき”を遠くに聞きながら紡がれる「相続」の物語。
前作「マネーロンダリング」から3年、国家という単位の枠組みを上手く跨ぐことによる、資産を「減らさない」スキームについては前作同様冴え渡るが、本作では人間の情と国家による法律の拘束が深く交錯する「相続」をテーマにしたことによって、金融スキームが程よく背景に回り、全体としてバランスよく一気に読める作品となった感じがする。
著者がこの3年、相当深く法律について勉強したことが手に取るようにわかる。3年後に、どんな次の作品を読ませてくれるのか、早くも楽しみになってきた。
国家の単位の枠組みの中で、資産を減らさない方法については、同じ著者の「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」が参考になる。
しかし、残念ながら資産を「増やす」方法には斬新な提案はない。世の中ローリスク・ハイリターンは無いということですね。