原作「インファナル・アフェア」の凄みが際立つ「ディパーテッド」
過去一番シビレた映画「インファナル・アフェア」。それを原作にハリウッドでのリメイク権争奪戦を経て作製された「ディパーテッド」を観た。出演 Leonardo DiCaprio, Matt Damon, Jack Nicholson、監督 Martin Scorsese、製作 Brad Pitt etc.と錚々たる顔ぶれだ。
あの、複雑な舞台を香港からアメリカに持ってくることには成功している。コンフリクトを生じた管理職が2週間の有給休暇を言い渡されるところなどいかにもアメリカらしい展開だ。しかし、持って来れなかったものがあまりに多すぎる。
まず、「間」が無い。例えば、宿命の二人、ヤンとラウが初めて面と向かった時の「静」。その「間」が緊張感をギリギリと巻き上げていたのだが、それが無い。画面の中で常に何かが動いているのだ。
そして、「湿度」。アメリカには高温多湿はないので、これはいたしかたが無いかもしれない。しかし「ディパーテド」では画面から温度感が伝わってこないのだ。これは、画の明度と関連しているのかもしれない。「インファナル・アフェア」には「ゴッド・ファーザー」への明らかな敬愛があった(とくに「インファナル・アフェアII 無間序曲」に強い)。そして撮影監督ゴードン・ウィリスが創りだした「黒の映像美」を効果的に取り入れている。画面を支配する暗み。そこにトニー・レオンの演技力が加わって、潜入捜査官の心の闇が観るものに伝わってくる。
そう考えると、「ディパーテッド」は原作「インファナル・アフェア」の中の「ゴッド・ファーザー」的なものを意識し、それを徹底的に洗い流すことを目指したともとれる。その結果、ギリギリまで削られ、練り上げられた脚本は少し弛緩し、すべてはハリウッドの予定調和の中に落ちついた。そして、原作の凄みがより際立つことになる。
「ディパーテッド」から入った人にもぜひ原作を観てほしい。3部作は時間軸が交差するので、1→2→1→3の順で観ることをお勧めする。香港映画の底力・奥深さを徹底的に味わえる。
- 「インファナル・アフェア 無間道」
- 「インファナル・アフェア 無間序曲」
- 「インファナル・アフェア 終極無間」
関連リンク
- インファナル・アフェア何でも事典 —どこよりも詳しい
- nancix diary: インファナルアフェア —上記サイト作者のブログ
2007.4.10 追記
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緊張感がたまらない!